筋ジストロフィー

　筋ジストロフィーは、遺伝的な原因により筋肉が徐々に弱くなり、筋力が低下していく疾患の一群です。最も一般的なタイプはデュシャンヌ型筋ジストロフィー（DMD）ですが、他にも多くのタイプがあります。筋ジストロフィーは、筋肉の萎縮、動作障害、歩行困難などを引き起こし、病気が進行するにつれて日常生活に大きな影響を与えることがあります。
鍼灸治療は、筋ジストロフィーの進行を止めるものではありませんが、症状の緩和や筋肉の機能維持、痛みの軽減、血行促進などに効果がある場合があります。特に筋肉のこわばりや筋力低下、関節の可動域の改善、さらには痛みの緩和に対して有益とされています。

筋ジストロフィーに対する鍼灸治療方法
1. 筋力の維持と筋肉の緊張緩和
• 鍼灸治療は、筋肉を刺激して血行を促進し、筋力の低下を予防する助けになります。また、筋肉の緊張やこわばりを和らげ、可動域を広げる効果もあります。
• 使用するツボ:
o 「肩井（けんせい）」（肩部）: 肩や上肢の筋肉のこわばりをほぐし、上半身の筋肉をリラックスさせます。
o 「合谷（ごうこく）」（手の甲）: 腕や手の筋肉の緊張を緩め、上肢の動作を改善します。
o 「太衝（たいしょう）」（足の甲）: 下肢の筋肉をほぐし、歩行や足の可動域を改善するために有効です。
o 「三陰交（さんいんこう）」（足首の内側）: 下半身の筋肉を活性化させ、脚の動きを助けます。

2. 血行促進と栄養供給
• 鍼灸は血行を改善し、筋肉や神経への酸素供給や栄養の供給を助けることができます。これにより、筋肉の状態が改善し、疲労感やこわばりを和らげることが期待されます。
• 使用するツボ:
o 「百会（ひゃくえ）」（頭頂部）: 全身の血行を促進し、エネルギーの流れを良くします。
o 「足三里（あしさんり）」（膝下）: 下肢の血液循環を良くし、筋肉の疲れを和らげる効果があります。
o 「大椎（だいつい）」（首の後ろ）: 頭部と全身の血流を改善し、筋肉の状態をサポートします。

3. 筋肉の疲労回復と痛みの軽減
• 筋ジストロフィーでは、筋肉が弱りやすく、疲れやすいため、鍼灸治療は筋肉の疲労回復や痛みの緩和に役立ちます。
• 使用するツボ:
o 「肩井（けんせい）」（肩部）や**「肩髎（けんりょう）」**（肩の後ろ）: 肩や上半身の筋肉の痛みや疲労を軽減するために使います。
o 「太渓（たいけい）」（足首の内側）: 下半身の疲労回復に役立ち、脚の筋肉をリフレッシュします。

4. 関節の可動域の改善
• 筋ジストロフィーによって関節の可動域が制限されることがあります。鍼灸治療は、関節周りの筋肉をほぐし、柔軟性を向上させることができます。
• 使用するツボ:
o 「膝蓋（しつがい）」（膝部の前面）: 膝の可動域を改善し、歩行の補助をします。
o 「陽陵泉（ようりょうせん）」（膝下）: 膝関節の周りの筋肉をほぐし、可動域を広げます。

5. 自律神経の調整と精神的なサポート
• 筋ジストロフィーは進行性の疾患であり、患者さんにとって精神的な負担が大きくなることがあります。鍼灸治療は、自律神経を調整し、リラックス効果をもたらします。これにより、ストレスや不安を軽減し、心身の状態を整えることができます。
• 使用するツボ:
o 「神門（しんもん）」（手首の内側）: 自律神経を整え、リラックス効果をもたらします。
o 「内関（ないかん）」（前腕の内側）: ストレスを軽減し、精神的な安定を促します。

6. 治療の頻度と経過
• 筋ジストロフィーに対する鍼灸治療は、症状に応じて調整します。進行性の疾患であるため、治療は症状の進行を遅らせることを目的として、定期的に行うことが重要です。治療頻度は、最初は週に数回程度が目安となり、その後症状が安定してくれば、頻度を減らしていきます。

他の治療法との併用
　筋ジストロフィーの治療は、薬物療法や理学療法と併用することで、より効果的な症状管理が可能になります。鍼灸は補完的な治療法として、筋肉の緊張緩和や疲労回復、痛みの軽減を助ける役割を果たします。

注意点
　筋ジストロフィーは進行性の疾患であるため、治療においては医師の監督が必要です。鍼灸治療は症状緩和や生活の質の向上に寄与することができますが、病気自体の進行を止めることはできません。治療を受ける際は、必ず専門の医師と相談し、治療方針を確認しながら行うことが重要です。
　鍼灸は、筋ジストロフィーの患者さんの生活の質を向上させ、症状の管理をサポートする可能性がありますが、医師との連携のもとで行うことが大切です。

治療時間：一回鍼灸治療時間は30分から60分
初診料：　３，０００円
料金：一回鍼灸治療4,500円から9,000円